『美紀の知ってるパンケーキって、ホットケーキミックスで作ったやつ? ルームシェアしてたとき、よく家にため買いしてたよね』

『その節はご迷惑おかけしました』

肩まである栗色の髪とはっきりとした二重の可愛らしい顔立ち、右手の薬指に婚約指輪をはめた美紀さんの向かいにいるのは気の知れた友人なのだろう。

美紀さんはテーブルに手をついて、友人にわざとらしくひれ伏した。

『いいよ、別に。美紀が彼氏と同棲してからは大量のホットケーキミックスの箱が見られなくて、ちょっと寂しかったくらいだし』

『私ってば、愛されてるなあ』

『すぐ調子に乗る』

やいやい騒いでいるふたりは笑いがひと段落ついてから、バターの乗ったパンケーキに蜂蜜をかけてナイフで切り口に運ぶ。

美紀さんは咀嚼しながらみるみると瞳を輝かせて、フォークを持ったまま頬を押さえた。