「私もここで死者と……事故で亡くなった妹と話しました。お互いに伝えたかったことを言い合って清算できたから、今は妹の死を思い出しても泣かずに済んでる」

大切な人の死は永遠に過去になんてならないのだと思う。記憶の中にその人がいる限り、ずっと昨日のことのように蘇る。

だからこそ思い出したときに涙がこぼれなくなるまで、今は亡き愛する人への心残りを晴らしてほしい。

本来ならばその奇跡のような機会は得られないのだから。

「もし、磯部さんが今も美紀さんの死から進めないでいるなら、騙されたと思って一度だけ私たちを信じてください」

磯部さんはなにも言わなかった。

唇を固く引き結んだまま、静かに踵を返して席に戻ってくれる。

私たちの会話を見守っていた水月くんは躊躇いがちにメニューを磯部さんに渡そうとしたが、美紀さんが『誠はパンケーキを知らないんです』と不安げに私を見た。