東出雲町の黄泉喫茶へようこそ

『お願い、会いに行かないといけない人がいるの。力を貸して』

「それってどんな人?」

『大事な人……結婚するはずだったの。ふたりで挨拶に行く前に出雲町にある実家に私だけ帰省して、あの人のところへ帰る途中だった。乗ってたバスが事故に遭って……』

そのまま、彼女はきっと亡くなってしまったんだ。

幸せの絶頂にいたはずなのに、なんて理不尽で悲しいことだろう。

胸が重くなって、彼女の辛さがひしひしと伝わってくる。

「あなたの会いたい人は、その婚約者さん……ですね?」

『ええ、そうよ』

「わかりました」

私はどうしたらいいか助力を乞うように、那岐さんを振り返った。

その瞬間、腕を引っ張られて、力強く抱きしめられる。

「え……」

「――それ以上、行くな!」

「な、那岐さん?」

突然の抱擁に心臓が止まりそうになった私は、那岐さんの顔を見上げる。

その顔は不安で不安でたまらないといった様子で、青ざめていた。