東出雲町の黄泉喫茶へようこそ

「陽太くんとか、喫茶店に現れた死者とはずいぶん姿が違うね」

「普通は肉体を失うと、魂はああやって形を失う。だが、黄泉喫茶では現世に残された人間の会いたいって思いが死者を生前の姿に戻すんだ」

そんな仕組みがあったんだ……。

「死者を会って話をするには、生者の強い思いが必要不可欠なんだね。それにしても、あの死者はどうしたらいいのかな」

「……どうもできない。あの死者に、成仏する気がない限りな」

「そんな……あんな暗がりにひとりでいるだなんて、寂しいよ」

なんとか、してあげられないのかな。

あの死者にも大事に思ってくれる誰かがいたはず。

あれが自分の妹だと思ったら、ひとりで彷徨ってるのを知ってるのにほっとくなんてできないよ。

そう思ったとき、器官としてのそれはないのに目が合った気がした。

『――私が、見えるの?』

また声が聞こえて、私は頭を押さえる。

ズキズキと痛むけれど、今度は取り乱さずにしっかり死者を見据えた。

「あなたの声、聞こえるよ」

「灯、なに言ってんだ」

「那岐さんには、聞こえませんか? あの死者の声」

目を丸くしている彼の反応を見たら、どうやら聞こえているのは私ひとりらしかった。

こんな霊能力、今までもってなかったはずだけど、なりふり構っていられない。

私は恐る恐る路地のほうへ歩いていく。