『ああ、なんてことだ……』

息を切らして額に汗をかきながら、私の姿を上から下まで見下ろして顔を真っ青にした彼は後ずさった。

私はふと足元にあった地面の水たまりを覗き込んで、驚愕する。

落ち窪んだ目からはウジがわき、身体の至るところが腐っている。

右肩からは、自分とは別の雷神の顔がボコボコと八体も出ていた。

『いっ……いやああああっ』

***

「いっ……いやああああっ」

自分の叫び声で、私は目覚める。

「おいっ、大丈夫か?」

視界に那岐さんの顔が広がって、ほっと息をついた。瞬きをすると、目尻から涙がこぼれて頬を伝う。

「あれ、私……どうして……」

視線を彷徨わせると、私は縁側で横になっていた。

そういえば……お風呂でのぼせたから縁側で涼もうと思って、横になったっきり眠っちゃったんだっけ。

じわじわと思い出した私は、那岐さんを改めて見上げる。

その手にはうちわが握られていて、私を仰いでくれていたらしいことがわかった。

「すみませ……ん」

謝ろうとしたのだが、声が掠れてうまくでない。

そんな私に、那岐さんは「待ってろ」と言って立ち上がると、どこかへ行ってしまった。

それから少しして、水の入ったコップを手に戻ってくる。