「いつも、大したもの作ってあげられなくてごめんね」
「なに言ってんだよ。忙しくても絶対、ご飯だけは作ってくれてただろ。それだけで十分だし……っていうか、本当はうれしかった」
「雄太郎……」
「まあ、でも……たまに焦げてたけどな」
わざとらしく茶化す雄太郎くんは、お母さんが気負うことないように気遣っていたんだろう。
笑い話にして、なにもできなかったと自分を責めるお母さんの心を軽くしようとしていた。
「他のことをやりながら作ってると、つい焼きすぎちゃうのよね」
「俺はパンの焼き加減で、お袋の忙しさとか、気持ちの浮き沈みとか、判断してたんだよ」
「え、なによそれ」
「ああ、今日は玉ねぎが生焼けだから、忙しくて余裕ねえんだなーとか、バロメーターにしてた」
「生焼け!? やだ、そんな日があったなんて、ごめんなさいね」
苦い顔でピザトーストをまたひと口と頬張るお母さん。
以前なら忙しくて、こうやって向かい合って日常の会話を楽しみながら食事をする機会もなかったのだと思う。
こういう些細な時間が大切なのに、失う前は気づけなかったりする。
ふたりは最後のひと口まで、何の変哲もない会話を繰り返して、それからふとお母さんは「ねえ、雄太郎」と息子の名前を呼んだ。
「なに言ってんだよ。忙しくても絶対、ご飯だけは作ってくれてただろ。それだけで十分だし……っていうか、本当はうれしかった」
「雄太郎……」
「まあ、でも……たまに焦げてたけどな」
わざとらしく茶化す雄太郎くんは、お母さんが気負うことないように気遣っていたんだろう。
笑い話にして、なにもできなかったと自分を責めるお母さんの心を軽くしようとしていた。
「他のことをやりながら作ってると、つい焼きすぎちゃうのよね」
「俺はパンの焼き加減で、お袋の忙しさとか、気持ちの浮き沈みとか、判断してたんだよ」
「え、なによそれ」
「ああ、今日は玉ねぎが生焼けだから、忙しくて余裕ねえんだなーとか、バロメーターにしてた」
「生焼け!? やだ、そんな日があったなんて、ごめんなさいね」
苦い顔でピザトーストをまたひと口と頬張るお母さん。
以前なら忙しくて、こうやって向かい合って日常の会話を楽しみながら食事をする機会もなかったのだと思う。
こういう些細な時間が大切なのに、失う前は気づけなかったりする。
ふたりは最後のひと口まで、何の変哲もない会話を繰り返して、それからふとお母さんは「ねえ、雄太郎」と息子の名前を呼んだ。