「え、そうなのか?」
「そうよ、うれしかったくらいだわ。ああ、ユウくんはこんなに大きくなったんだって。進路の話ができたのも、あなたが大人になっていくのを実感できて感動したもの」
涙を指先で拭いながら、ふわりと微笑むお母さん。
シングルマザーとして毎日疲れてしんどいこともあったはずなのに、目尻の笑いジワからこれまで雄太郎くんと過ごした時間がどれほど幸せだったのかが伝わってくる。
「ユウくんがお嫁さんを連れてきて挨拶に来てくれるところ、花婿さんになるところ、孫の顔……もっともっとユウくんの成長を見たかった」
私もお母さんに女手ひとつで育ててもらったから雄太郎くんの気持ちも、少しだけれどお母さんの気持ちもわかる。
大人になって初めて、お金を稼ぐことの大変さを知った。
なんの資格もなければ時給八五〇円のスーパーやコンビニでしか働けないし、八時間働いても大した稼ぎにはならない。
自営業なんて響きはいいかもしれないが、家の食堂も儲かっていたわけじゃないから、売り上げなんてほとんど税金を払って終わりだ。
私が学生の頃は正直言って、裕福どころか貧乏だった。
なので食堂の仕事が終わったあとにお母さんはチラシをポストに入れるバイトや花のコサージュ作りといった内職をしていたくらいだ。
苦労していたのは明白だったのに、私はお母さんの泣き言ひとつ聞いたことがない。
大人になって、ふと逃げ出したいと思ったことはなかったのかと尋ねたことがあったのだけれど、お母さんは『もしひとりだったら、そうしていたのかもしれない。でも、あなたたちがいたから頑張って生きなきゃと思えたの』と言っていた。
きっと、どんなに疲れていても辛くても、家族っていう幸せの形を守るためだったから、雄太郎くんのお母さんは笑っていられたのだ。
「そうよ、うれしかったくらいだわ。ああ、ユウくんはこんなに大きくなったんだって。進路の話ができたのも、あなたが大人になっていくのを実感できて感動したもの」
涙を指先で拭いながら、ふわりと微笑むお母さん。
シングルマザーとして毎日疲れてしんどいこともあったはずなのに、目尻の笑いジワからこれまで雄太郎くんと過ごした時間がどれほど幸せだったのかが伝わってくる。
「ユウくんがお嫁さんを連れてきて挨拶に来てくれるところ、花婿さんになるところ、孫の顔……もっともっとユウくんの成長を見たかった」
私もお母さんに女手ひとつで育ててもらったから雄太郎くんの気持ちも、少しだけれどお母さんの気持ちもわかる。
大人になって初めて、お金を稼ぐことの大変さを知った。
なんの資格もなければ時給八五〇円のスーパーやコンビニでしか働けないし、八時間働いても大した稼ぎにはならない。
自営業なんて響きはいいかもしれないが、家の食堂も儲かっていたわけじゃないから、売り上げなんてほとんど税金を払って終わりだ。
私が学生の頃は正直言って、裕福どころか貧乏だった。
なので食堂の仕事が終わったあとにお母さんはチラシをポストに入れるバイトや花のコサージュ作りといった内職をしていたくらいだ。
苦労していたのは明白だったのに、私はお母さんの泣き言ひとつ聞いたことがない。
大人になって、ふと逃げ出したいと思ったことはなかったのかと尋ねたことがあったのだけれど、お母さんは『もしひとりだったら、そうしていたのかもしれない。でも、あなたたちがいたから頑張って生きなきゃと思えたの』と言っていた。
きっと、どんなに疲れていても辛くても、家族っていう幸せの形を守るためだったから、雄太郎くんのお母さんは笑っていられたのだ。