「お袋、夢じゃない……。飛行機が墜落して、それで……死んだのも夢じゃないんだ」

「雄太郎……嘘よね?」

「……嘘じゃない。こんな笑えない冗談、俺が言うはずねえだろ」 

「そんな……っ。あなたにしてあげたいこと、いっぱいあったのよ。なのに……っ」


 涙混じりの声が痛々しくて、私は耐えられずにスッと視線を逸らしてしまった。

 こんな傷ついた顔を見てしまったら、雄太郎くんはきっと自分を責めてしまう。いくら真実を告げて心残りを作らないとはいえ、胸が張り裂けそうだ。 


「あのな、ここは死者と会える喫茶店なんだ。俺は……あのままお袋とさよならなんて嫌だったから、今まで変な意地を張って言えなかったことを伝えるために会いに来た」


 本当は逃げ出してしまいたいはずなのに、お母さんを落ち着かせようと静かな声音で話す雄太郎くん。
そんな彼にお母さんは「意地?」と聞き返した。


「普段、俺のことなんて構わないくせに気が向いたときだけ口出しして……なんて、酷いこと言ってごめん」

「そんなこと……気にしなくていいのに」

「いや、言わせて。あのときの俺は、お袋に図星を指されて苛立ってた。具体的にどう夢を叶えるのか、明確なビジョンもなかったし、ちゃんと自分が悪いってわかってたのに、折れるのが癪でできなかったんだよ」


 白い湯気を放っているピザトーストに視線を落として、雄太郎くんは懐かしむように口元に微笑を浮かべた。


「そうね、ユウくんは中学生になってから反抗期だったから。でも、それが普通なんだから、冷たくされたって嫌だと思ったことはなかったわ」


 お母さんの返答は予想外だったのか、ユウくん――雄太郎くんは弾かれたように顔を上げて目を瞬かせる。