「灯、他になにをすればいい?」

「あと、冷凍コーンを適量かけてくれる?」

「わかった」


 那岐さんがコーンをトーストに降りかけて、温まった魚焼きグリルの中へ投入した。焼き色がつくまで八分、二枚で十六分かけて出来上がる。

 魚焼きグリルを開けようとしたら、那岐さんがスッと私の前に立った。


「危ないから俺がやる。お前は下がってろ」

「はい……ありがとうございます」


 こういうところは紳士なんだなと思いながら、私は皿を二枚用意した。那岐さんにパンを乗せてもらうと、水月くんがカウンター越しに手を伸ばしてくる。


「俺が運ぶよ」

「ありがとう、熱いから気をつけてね」

「はーい」


 水月くんにお盆を渡し、私も那岐さんと一緒に後を追う。張り詰めた面持ちの雄太郎くんの席の前に立った水月くんは、いつものように注意事項を説明した。

「絶対にお母さんに出されたピザトーストをつまみ食いしたら駄目だからね? それから、料理は一時間以内に食べ終えること。もし破れば、きみもお母さんも永遠にこの喫茶店に囚われることになる」

「わ、わかった」


 ゴクリと唾を飲み込んだ彼は、いっそう身体に力をれて頷いたのがわかった。

 私は見るに堪えなくて、雄太郎くんの肩を解すように手で揉む。