「これでいいんですか?」
確認するように、雄太郎くんは私を見る。
「うん、大丈夫だよ」
「そうですか……あの、お願いします」
雄太郎くんから返されたメニュー表を「はい」と言って、慎重に預かる。
この中に書かれているだろう料理名は、彼と彼の大切な人との思い出そのものだ。
だから大事に守るように、すでにカウンターに立っている那岐さんに差し出す。
しかし、彼は首を横に振り、私にメニュー表を押し返した。
「今回は、お前がやってみろ」
「……は?」
私にはメニューを指でなぞっただけで、レシピを理解できる特殊能力はない。なので、那岐さんの言葉の意味を図りかねた。
でも、彼は問答無用でメニューを開くと、私の指を掴んで【ピザトースト】の文字の上に乗せる。
その瞬間、どこからかトントントンと包丁が規則正しくまな板を叩く音がした。すぐに視界は見知らぬアパートの一室に塗り替えられていく。
ここ、どこだろう。
視線を巡らせれば、小さなキッチンで四十代くらいの女性がピーマンや玉ねぎを切っているところが見えた。家にオーブンがないのか、魚焼きグリルで食パンを焼いている。
ピザトースト、作ってるんだ。
彼女はおそらく、雄太郎くんのお母さんだろう。スーツを着ているところを見ると、出勤前だということがわかった。
私はしばらく、どんな調味料を使っているのか、パンの焼き加減に至るまで、お母さんの作っていたピザトーストのレシピを目に焼きつける。
確認するように、雄太郎くんは私を見る。
「うん、大丈夫だよ」
「そうですか……あの、お願いします」
雄太郎くんから返されたメニュー表を「はい」と言って、慎重に預かる。
この中に書かれているだろう料理名は、彼と彼の大切な人との思い出そのものだ。
だから大事に守るように、すでにカウンターに立っている那岐さんに差し出す。
しかし、彼は首を横に振り、私にメニュー表を押し返した。
「今回は、お前がやってみろ」
「……は?」
私にはメニューを指でなぞっただけで、レシピを理解できる特殊能力はない。なので、那岐さんの言葉の意味を図りかねた。
でも、彼は問答無用でメニューを開くと、私の指を掴んで【ピザトースト】の文字の上に乗せる。
その瞬間、どこからかトントントンと包丁が規則正しくまな板を叩く音がした。すぐに視界は見知らぬアパートの一室に塗り替えられていく。
ここ、どこだろう。
視線を巡らせれば、小さなキッチンで四十代くらいの女性がピーマンや玉ねぎを切っているところが見えた。家にオーブンがないのか、魚焼きグリルで食パンを焼いている。
ピザトースト、作ってるんだ。
彼女はおそらく、雄太郎くんのお母さんだろう。スーツを着ているところを見ると、出勤前だということがわかった。
私はしばらく、どんな調味料を使っているのか、パンの焼き加減に至るまで、お母さんの作っていたピザトーストのレシピを目に焼きつける。