「関心がなかったのは、俺も同じだ……。あのときの俺は自分のことばかりで、お袋のことなんて知ろうともしなかった。そんで、お袋が死んだってわかったのは翌日。携帯にお袋の会社から、安否を確かめる連絡が入って知ったんだ」
――私も、茜を傷つけてしまったことを今も忘れられずにいる。時は巻き戻せないから、どんなに後悔しても起きた事実は変えられない。
それは明日、来世、そのまた来世も奪われてしまったような、そんな深い深い重い重い絶望の沼に沈んでいくような感覚。
息をしたくても泥が喉頭、咽頭、気管を通って肺に流れ込んでくるような息苦しさを伴う。
「私たちは……似てるね」
無意識に出た呟きに、雄太郎くんは「え?」と目を瞬かせる。その視線にはどういうこと?という問いが含まれていたので、私はぎこちなく口角を上げた。
「私も大切な人に最後にかけた言葉が、相手を傷つけるものだったの。それが忘れられなくて、ずっとずっと胸に棘が刺さってるみたいな気分なんだ」
茜が亡くなると知っていたら、あんな言葉をかけたりはしなかった。ただ、『このオムライスおいしいね』って、穏やかに話せたはずだった。
ループする『あのときこうすれば』『こんなことにはならなかったのに』の方程式。答えはいつも『後悔先に立たず』だ。
「俺は……」
唇を噛んで俯いた彼の真下にある机の上にはポタポタと雫が落ち、一円玉よりも小さな水たまりを作っている。
それをじっと見守っていた。小刻みに上下する肩も、ときどき聞こえてくる嗚咽にも気づかないふりをして。
「俺は、お袋が死ぬってわかってたら、あんなこと言ったりしなかった……!」
空気がビリビリと震えた気がした。彼の痛みがそのまま、私たちの肌を突き刺しているようで痛い。
――私も、茜を傷つけてしまったことを今も忘れられずにいる。時は巻き戻せないから、どんなに後悔しても起きた事実は変えられない。
それは明日、来世、そのまた来世も奪われてしまったような、そんな深い深い重い重い絶望の沼に沈んでいくような感覚。
息をしたくても泥が喉頭、咽頭、気管を通って肺に流れ込んでくるような息苦しさを伴う。
「私たちは……似てるね」
無意識に出た呟きに、雄太郎くんは「え?」と目を瞬かせる。その視線にはどういうこと?という問いが含まれていたので、私はぎこちなく口角を上げた。
「私も大切な人に最後にかけた言葉が、相手を傷つけるものだったの。それが忘れられなくて、ずっとずっと胸に棘が刺さってるみたいな気分なんだ」
茜が亡くなると知っていたら、あんな言葉をかけたりはしなかった。ただ、『このオムライスおいしいね』って、穏やかに話せたはずだった。
ループする『あのときこうすれば』『こんなことにはならなかったのに』の方程式。答えはいつも『後悔先に立たず』だ。
「俺は……」
唇を噛んで俯いた彼の真下にある机の上にはポタポタと雫が落ち、一円玉よりも小さな水たまりを作っている。
それをじっと見守っていた。小刻みに上下する肩も、ときどき聞こえてくる嗚咽にも気づかないふりをして。
「俺は、お袋が死ぬってわかってたら、あんなこと言ったりしなかった……!」
空気がビリビリと震えた気がした。彼の痛みがそのまま、私たちの肌を突き刺しているようで痛い。