「雄太郎、洗いざらい吐くといいぞ」


 まるで取調室で被疑者を問い詰める刑事みたいな物言い。オオちゃんのこの間違った言葉遣いは、どこで覚えてくるんだろう。

神様っていうくらいだし、私よりうんと年上だとは思うのだけれど、見た目は子供なので教育上心配になった。


「いや……吐くもなにも、お袋は俺に会いたくないだろうなって思って……」


 私の背中に雄太郎くんの切ないひと言が届いた。

 会いたい人って、お母さんのことだったんだ。ならなおさら、自分の子に会いたくない親なんているはずがないのに。

 私はメニューを手に振り返る。


「ねえ、雄太郎くん。どうしてそう思うの?」

「……旅客機一二六便」

「――え?」

「飛行機墜落事故のこと、知ってますよね」


 断定した言い方だったのは、繰り返しニュースで報道されるほど大きな事故だったからだ。おそらく、知らない人間などいない。

 沈黙を肯定ととったのか、雄太郎くんは認識している前提で話し続ける。


「うちは小学三年生のときに離婚してて、母親は女手ひとつで俺を育ててくれました。まあ、お袋はバリバリのキャリアウーマンだったから、稼ぎはそこら辺の男よりあったと思います」

「稼ぎがあるってことはお母さん、忙しかったんじゃないか?」


 水月くんが尋ねれば、雄太郎くんは「そうですね」と遠い目をして天井を仰ぐ。