「電波に乗って、この店のことが知れ渡ってるって……どんだけ!」


 思わず声を上げる私の後ろで、陽太くんがふっと陰気さを纏った笑みをこぼす。


「……その割には、お客さん少ないけど」

「当たり前だろ。ここは心に強い願いを抱いた人間でないと来れない」


 腕組みをした那岐さんは、カウンターから呆れた声を飛ばす。彼の言う強い願いとは〝会いたい〟という思いのことだろう。

ただ面白半分にあの鳥居を通過しても、肩透かしをくらうだけということだ。


「はい、お冷どうぞ」


 水月くんがお水を差し出したら、コップを受け取った男の子がゴクゴクと一気に飲み切ってしまう。

 それを唖然としながら見ていた水月くんは「わお」と言って、ウォーターポットを傾けると空になった彼のコップに水を注ぎ足した。


「ふむ、雄太郎(ゆうたろう)が緊張してるのは罪悪感のせいだな」


 オオちゃんが顎に手を当てて、名探偵のようにビシッと男の子を指差した。

おそらく雄太郎というのは目を丸くしている彼の名前だろう。私のときみたいに神様パワーでなんでもわかってしまうらしい。


「僕は神様だから、なんでもお見通しだぞ」

「……は?」


 雄太郎くんの顔には〝なに言ってるんだこいつ〟の文字が見える。当然の反応なので、私は苦笑いして拭いたばかりのメニューを取りに隣の席へと向かう。