「助かる」
それだけ言って、カウンターに戻っていく那岐さんの背を見送るオオちゃん。その顔には満面の笑みが浮かんでいて、うれしそうに私を振り返る。
「今の聞いたか!」
「ふふっ、うん聞いてたよ。那岐お兄ちゃんは、オオちゃんを頼りにしてるって」
オオちゃんにとって那岐さんは兄のような存在なのだろうと勝手に思って言ったのだが、キッチンからガタガタッと調理器具が落ちるような音が聞こえた。
何事かとカウンターの方を向けば、水月くんが吹きだす。
「ははっ、あいつ動揺してるな」
「え、なぜに?」
「それを俺の口から言うのは野暮ってものだよ」
片目をパチリと瞑る水月くんに、ますます頭の中にクエスチョンマークの波が押し寄せてくる。
「ちょっと意味がさっぱり……」
「長らくあいつの親友やってるけど、灯ちゃんが来てからのあいつは人間らしくなったな」
「え、おふたりは付き合いが長いんですか?」
「七年くらいかな。大学からの親友なんだ」
「へえ」
私が相づちを打つと、「あの」と声が聞こえてきた。振り向けば、喫茶店の扉の前に二十歳くらいの男の子が立っている。
私は慌てて席を立ち、彼に駆け寄った。
「すみません、お客様ですね!」
「はい……。あの、ここは本当に……」
キョロキョロと視線を彷徨わせている男の子の言いたいことを察した私は、その背に手を添えて席へ促す。
「ええ、ここは会いたい人……死者に会える喫茶店です」
「噂、本当だったんだな」
席についても実感がわかないのか、落ち着かない様子で何度も座り直している。私が「どんな噂?」と聞き返すと、彼はスマートフォンの画面を見せてくれた。
そこには【都市伝説、黄泉の国と交信できる喫茶店の情報求む】と書かれたネットの掲示板が表示されていた。
それだけ言って、カウンターに戻っていく那岐さんの背を見送るオオちゃん。その顔には満面の笑みが浮かんでいて、うれしそうに私を振り返る。
「今の聞いたか!」
「ふふっ、うん聞いてたよ。那岐お兄ちゃんは、オオちゃんを頼りにしてるって」
オオちゃんにとって那岐さんは兄のような存在なのだろうと勝手に思って言ったのだが、キッチンからガタガタッと調理器具が落ちるような音が聞こえた。
何事かとカウンターの方を向けば、水月くんが吹きだす。
「ははっ、あいつ動揺してるな」
「え、なぜに?」
「それを俺の口から言うのは野暮ってものだよ」
片目をパチリと瞑る水月くんに、ますます頭の中にクエスチョンマークの波が押し寄せてくる。
「ちょっと意味がさっぱり……」
「長らくあいつの親友やってるけど、灯ちゃんが来てからのあいつは人間らしくなったな」
「え、おふたりは付き合いが長いんですか?」
「七年くらいかな。大学からの親友なんだ」
「へえ」
私が相づちを打つと、「あの」と声が聞こえてきた。振り向けば、喫茶店の扉の前に二十歳くらいの男の子が立っている。
私は慌てて席を立ち、彼に駆け寄った。
「すみません、お客様ですね!」
「はい……。あの、ここは本当に……」
キョロキョロと視線を彷徨わせている男の子の言いたいことを察した私は、その背に手を添えて席へ促す。
「ええ、ここは会いたい人……死者に会える喫茶店です」
「噂、本当だったんだな」
席についても実感がわかないのか、落ち着かない様子で何度も座り直している。私が「どんな噂?」と聞き返すと、彼はスマートフォンの画面を見せてくれた。
そこには【都市伝説、黄泉の国と交信できる喫茶店の情報求む】と書かれたネットの掲示板が表示されていた。