「それ、ばあちゃんには不評だった」


 唐突な報告に「え?」と聞き返せば、那岐さんはじっとサラダを見つめたまま遠い目をする。


「調味料のさしすせそに入らないマヨネーズは、ばあちゃんにはオシャレすぎるって」

「ああ、確かに気持ちはわからなくないかも。うちの食堂も祖母の代から続いてるんですけど、和食がメインですから」


 調味料のさしすせそ――砂糖、塩、酢、醤油、味噌は年齢に関わらず日本人なら誰にとっても慣れ親しんだ味だろう。

 いつか見た番組で、マヨネーズやケチャップなどを使う洋食は戦後二十年かけていっそう欧米化に進んだのだと目にしたことがある。

 那岐さんの年齢からするに、おばあさんは八十代くらいが妥当だろうから、洋食が広まった当時は二十代。

人生の約半分は和食で育っていることになるので、オシャレすぎるという感想が出るのも納得がいく。

「でも……しそとか入れたら、和風っぽくて食べやすくなりそうですよね」 

「ああ、いいアイディアだな」

「このソース、たらことマヨネーズ以外になにが入ってるんですか?」

「めんつゆ。俺なりに和風にしようと思ったんだ」

「なるほど! 確かにさっぱりしてていいですね。あ、ごまとわさびも合いそう」


 いつの間にかニュースの話から脱線して、私は那岐さんとふたりでタラマヨソースの改善点について熱く語った。