「えーっと、トマトケチャップにウスターソース……」


 あとはローリエ。確かこれって、ゲッケイジュの葉を乾燥させた香辛料だよね。

 ハヤシライスって、つい出来上がってるデミグラス缶を使ってしまいがちだけど、手間がかかるからこそ、コクのあるおいしいルーができるんだろうな。

 記憶を手繰り寄せて先ほど言われた調味料を鍋に入れていると、那岐さんが冷凍庫から凍ったグリンピースを取り出して目の前に差し出してくる。


「十分煮たら、グリーンピースを入れてさらに五分。味は俺が塩コショウで調整する」

「りょ、了解しました」


 軽く敬礼をすると「変なやつ」とさりげなくひどいひと言を浴びせられた。

 いちいちイラついたりしない、大人だからね。
 軽く那岐さんの悪態を流した私は、黙々と作業に集中する。

 おばあさんが、会いたい人と後悔のない最後を迎えられますように。

 最後にそう心を込めれば、おばあさんの思い出のハヤシライスは出来上がった。


「俺が運ぶね」


 水月くんが絶妙なタイミングで現れてくれたので、私はお皿にライスを盛って、ルーポットにルーを注ぐとお盆に乗せる。


「待て、薬味を忘れてる」


 すぐそばで声が聞こえたと思ったら、那岐さんが私の後ろから小皿に入れた福神漬けや紅生姜、らっきょうをお盆に置いた。

 料理を運ぶ水月くんに続いて、私と那岐さんもおばあさんのもとへと歩いていく。