「一緒にご飯を食べに来てるのに、感じ悪いよ」
こうして食事中の携帯の使用について注意するのは、何度目だろう。言ったところで、「うるさいな」くらいにしか思っていないんだろうな。
私だって、できることなら注意なんてしたくない。この会話になると妹は決まって不機嫌になるから、こっちも嫌な気分になるし、面倒なのだ。
「母親面しないでよ」
予想を裏切らず、茜は唇をへの字にして文句をたれると、やけくそにオムライスを頬張る。こうなったら、小一時間は口をきいてくれなかったりする。
うちは小学生のときに両親が離婚していて、シングルマザーの家庭で育った。働きに出る母の代わりに、家事をするのは私の担当。
もちろん妹の勉強を見るのも、進路面談に参加するのも私だったので、いつしか姉妹というよりは彼女の母親代わりのつもりになっていたのだと思う。
「心配にもなるでしょ。あんたは二十歳になってもバイトで、進学もしなかった。雑貨屋で働くなんて、歳とったら無理だからね」
そう、茜はおしゃれをしたいからという軽率な理由で雑貨屋でバイトしている。
勉強も嫌い、仕事も三ヶ月ペースで変わる飽きっぽい性格。先が見えていないから『おばさんになったらスーパーのレジ打ちでもするよ』と言って、私の話を流す。
言っておくが、スーパーのレジ打ちではひとりで生きていけるだけの給料を稼げない。
家の家賃、光熱費にいくらかかっているかなんて、実家暮らしなのにお金を入れてくれるわけでもない彼女には想像すらできていないのだろう。