「僕は実りの神様だからね。お金を生み出すのは朝飯前なのだ」


 拳を握って、ふんっと鼻を鳴らすオオちゃんは得意げだ。力の使い道については褒められたものではないけれど、お金に困っていないことはわかった。


「神様の力をろくでもないことに使ってるよね……」


 オオちゃんを憐れむように見て、陽太くんがボソリと呟いた。


「むむっ、これも人助けのためだぞ。言えなかった言葉、変えたい別れの形、黄泉喫茶を必要としてる人間はたくさんいるのだ。灯のようにな!」


 そう言って、私の服の裾を軽く引いたオオちゃんは唐突に「なぬっ」と変な声をあげた。何事かと彼を見下ろすと、私はじっと凝視されている。


「おぬし、ときどき変な夢を見たりしないか?」


 それは確証をもって告げられていた。でも、どうしてオオちゃんが私の見るおかしな夢のことを知っているのだろう。

 ほとんど毎日のように、私でない私が冷たい岩の前で誰かに話しかけている夢を見る。そこから先は、いつも真っ暗な闇に閉ざされてしまって見えない。

ただなぜか、知りたくないと思う。それを知ってしまったら、私は私でなくなってしまうような気がするから。