「ありがとうって言われるたびにね、こんな私でも誰かの役に立てるんだって思ったの。だから茜にも自分を誇れるような仕事を見つけてほしかった」


 すべてが過去形になってしまうことに気づいて、胸が締めつけられる。

 もっと、本音で彼女に向き合えばよかった。なんでもできるお姉さんを振る舞うのではなくて、私にもかっこ悪いところがあるんだよって話してあげればよかった。

 誰もが不安になるし、誰もが通る道だから。そう寄り添って、茜のペースに合わせて、一緒に大人になっていけたらよかった。

 家族であっても姉妹であっても、お互いのことをすべて理解できているとは限らないんだ。


「茜。きついことばっかり言って、ごめんね」

「なに言ってるの。お姉ちゃんは、私のことを考えててくれてただけじゃん。なのにあんな態度とって、ずっと後悔してた……っ」


 か細くなっていく妹の言葉に、私は堪えきれずに涙を流す。

 後悔しているのは茜も同じだったのだと気づいて、ようやくここで、もつれた糸を解すことができたのだと安堵した。


「考えるのは、あたりまえでしょ。私は茜のお姉ちゃんなんだから」

「うんっ……うんっ、ありがとう。本当、頼もしいお姉ちゃんだよ」


 ふたりで泣きながら、トマトスープオムライスを食べる。茜と話をしていくうちに、味がどんどんおいしくなっていく気がした。

それはきっと、食べる人の気分が晴れているからだ。心と味覚は切っても切り離せない関係で、どちらも不足してはならないスパイスなのかもしれない。