「ふふっ、昔から思ったことはすぐに口に出しちゃうんだよね、茜は」 

「まあ、否定派できないかな。だから、お姉ちゃんとは喧嘩ばっかりだった。だって、お姉ちゃんも引き下がらないんだもん。ダイヤモンド級の頑固さ」


 茜も笑い話のように私の悪いところを言う。こんなふうに穏やかな気持ちで彼女と話せたのはいつぶりだろう。

お互い大人になってから、些細なことが癇に障るようになった。たぶん、どちらも大人になりきれていなかったのだ。本当は。


「今だから言うけどさ」

 茜がぽつりと呟く。

「うん」

「お姉ちゃんの話を聞くのが嫌で、面倒でたまらなかった。でもね、全部が正しいって、わかってたから腹が立ったんだ」


 言葉を紡ぐ合間にオムライスを食べながら、茜は打ち明けてくれる。彼女の言葉を遮らないように、口を挟まないで耳を傾けた。


「悔しくて、それ以上に羨ましかった。なんでも器用にできるお姉ちゃんのことが……」


 スプーンでトマトスープを掬ったり戻したり、混ぜたりを繰り返す茜に私はバカだなと呆れ混じりに息をつく。


「私は器用なんかじゃないよ」

「なにそれ、謙遜?」

「違うってば。私は不器用だから強みが欲しくて、誰かに認められるような仕事に就きたいって思ったの」

「それが看護師?」

「そう。最初はね、別に人の役に立ちたいとか、そんな大そうなものじゃなかった。でも、いつからだったかな……」


 私は茜と同じようにスプーンでトマトスープの海をかき混ぜながら、自分が看護師になって得たやりがいを思い出す。