「食べよう。料理も後悔も、あの日に残したままにしないように」

「お姉ちゃん……うん」


 返事をした茜の声も、わずかに震えている気がした。
 私たちは顔を見合わせてぎこちなく笑いあうと、ようやくトマトスープオムライスをスプーンで掬う。

 黄金色に揺れている、半熟卵で包まれたオムライス。

落とさないよにそっと口の中に入れると、ご飯を固めに炊いているからか、ケチャップを入れていても触感がねちょねちょしていない。薄味がついたオムレツとライスのバランスがちょうどよかった。

 しかも、こってりとしたオムライスに支配された口内は、あっさりとしたトマトスープがリセットしてくれるので飽きずに食が進む。

 なによりとろりとした触感も味も優しくて、心もほくほくと温まるのを感じていると、頬が緩んでいく。そんな私を見た茜は、ぷっと吹き出した。


「あのさ、お姉ちゃんって、あのお店に行くと絶対これしか頼まないよね」

「一度ハマると結構同じもの頼んじゃうんだよね。そういうあんたは、ジャンクフードとお菓子ばっかりじゃん。身体に悪いよ」

「そうだね。まあ、もう健康に気を使っても意味なくなっちゃったんだけど」


 自虐的な発言に空気が重くなる。すぐに「ごめん」と言った茜を見て、私はわざと笑ってみせる。