「先にチキンライスを作るんですね」


 那岐さんの手元をのぞき込むと、しめじ百グラムを小分けにして、ニンニクを一片だけみじん切りにしている。

 早いし、段取りにも無駄がない。どこか食堂とかレストランで、働いてたのかな……。

 感心してついその手技に目を奪われていると、油を大さじ一杯、バター二十グラムを入れて火にかけた鍋に切った食材を投入していく那岐さん。

味付けだろうか。塩を小さじ一杯、胡椒を適量ふりかけ、トマトケチャップを六十グラム入れて焼いていく。


「具材が調味料と馴染んだら、洗った米を炊飯器に入れて熱湯で炊く。粘りが出なくなるからな」


 私が興味津々に身を乗り出して見ていたからだろう。
那岐さんはなにも言わなくても、ポイントを教えてくれた。顔に似合わず、意外と優しい人なのかもしれない。


「ここでチキンライスは終わりだ。そろそろトマトスープ作りに取りかかる」


 隣で洗い物をしている水月くんから綺麗になったまな板を受け取って、トマト四百グラム、玉ねぎ二十グラム、ジャガイモ四十グラムをざく切りにした那岐さんは、鍋に油を敷いて野菜を二十分煮込み始めた。

 トマトから水が出てくると、塩胡椒やバジルをかけて火を止める。


「わざわざ水を使わなくても、弱火で煮込めば野菜から水分が多く出る。特にトマトは水分が豊富だからな、このスープの作り方がいちばんだ」


 那岐さんの言う通り、水を使わなくても十分すぎるほどの水分が出ている。ジャガイモがスープをとろとろにしてくれているので、オムライスによく絡みそうだ。