「放てーっ」


 怒号とともに無数の矢がこちらに飛んでくる。

「那岐、灯ちゃん!」

 黄泉平坂のど真ん中にいた私と那岐さんに向かって、水月くんが叫んだ。

 矢が私たちに向かってくるのがわかったが、想像をやめずにいると光が私と那岐さんを包んだ。押し寄せてくる軍勢を覆い隠すように目の前に大きな岩が生まれ、黄泉の国への道を塞ぐ。


「た、助かった……?」


 私はずるずるとその場にしゃがみ込み、手を繋いだまま那岐さんを見上げる。

 那岐さんの顔にも安堵の色が滲み、私たちは汗をびっしょりかきながら、月光の下でどちらともなく笑みを浮かべた。


「桃シャーベット作る約束、叶えられそうだな」