「ふふっ、でも……なんだか憎めな――」


 そう言いかけたとき、身体が浮遊感に襲われる。何事かと自分の身体を見下ろしたときには、足元に空いた大きな穴に落ちていくところだった。


「灯!」


 少しも迷わず穴の中に飛び込んだ那岐さんがとっさに私の手を掴む。


「「那岐!?」」

 声を揃えて水月くんと陽太くんが那岐さんの腰に抱きつき引き上げようとするも、私の身体にかかる引力に負けて、一緒に奈落に投げ出される。


「まずいぞ! この先は黄泉の国なのだ!」


 慌ててオオちゃんも穴にダイブし、最後尾にいた陽太くんの足にしがみつく。

 こうして荒々しく闇に引きずり込まれた私たちは、黄泉の国の岩の床に積み重なるようにして落っこちた。


「いったたた……」


 本日二度目、容赦なく背中を強打して泣きそうになる。だが、後頭部に那岐さんが手を差し込んでくれていたおかげで、脳は無事そうだ。


 それに、私の上に那岐さんと愉快な仲間たちが積み木状態になっているのだが、苦しくない。よく見ると、私が潰れないように那岐さんが肘を突っ張ってくれていた。


「お前ら……早く退け」


 男二名と子供一名の体重を一身で支えている那岐さんに、私はなぜか胸が高鳴る。

 きっとこれもイザナギとイザナミのせいだと自分に言い聞かせていると、皆がようやく私と那岐さんの上から退いた。