――イザナミ、とりあえずシャーベットでも食べたらどうかな? 溶けちゃうし、イライラするときは甘いものを食べるに限るよ。

 白熱する言い争いを鎮火させるために口を挟むとイザナミはふんっと鼻を鳴らしつつ、桃のシャーベットを見下ろす。

 こんなもの、という心の声が聞こえてきそうなほど乱暴な手つきで、イザナミはスプーンを手にシャーベットを掬った。

 銀の器の中で証明の光を反射させる桃色のキラキラとした宝石。それを口に運び、舌の上でしゅわっと溶けていく感覚にイザナミは「ん!?」と目を見開く。


「とろとろして、甘いわ……」


 怒るのも忘れて固まっているイザナミにつられてか、イザナギもシャーベットをひと口食べた。その冷たさにビクッと肩を跳ねさせたイザナギだったが、徐々に双眼を細めていく。


「桃か……姿形はどこにもないというのに、しっかりその存在を感じる」


 感覚は共有しているので、那岐さんの桃のシャーベットのおいしさは私にもちゃんと伝わってくる。

 桃の濃厚な甘さがレモンの酸味と冷たさにうまくマッチして、さらっとした味わいを生み出しているのだ。

 それに加えてシャーベットは丁寧に何度も泡だて器でキメを細かくし、メレンゲが入っているからか、ふんわりしつつもこってりしている。