「そんで、また冷蔵庫に三十分くらい入れとく。その間に卵白を泡立ててメレンゲを作って凍ったシャーベットと混ぜると、さらに三十分冷やして飾りのミントを載せて出来上がりだ」

「わりと簡単にできるんですね! 今度は一緒に作りたいです」

「帰ったらな。その前に、俺達にはやることがある」


 ふたりのすれ違いを解決するために話し合わせるには、私たちの中にいるイザナミとイザナギをここに呼び出さなければならない。

 その方法はオオちゃんが説明してくれる。


「ただ、胸の内に語りかければよいのだ! おぬしらの身体を使って、ふたりは会話できよう」


 私は那岐さんと顔を見合わせて頷き合うと、目を閉じてオオちゃんに言われた通り心の中でイザナミに声をかける。

 ――イザナミ。


『話すことなどない。早く殺せ』


 思いのほかすぐに返答があったが、口を開けば憎いだの殺せだの物騒だ。長年で夫婦の間にできた溝はマントルよりも深いらしい。


 私はふうっと息を吐くと、イザナミを説得するべく言葉を重ねる。

 ――イザナミ、あなたはイザナギを愛していたからこそ、裏切られたのが悲しかったんでしょう?


『愛してなどいない』


 本心を認めたくないのか、知られたくないのか、イザナミは間髪入れずに否定してくる。

 ――誤魔化したって、私にはわかるよ。だって、あなたが私に記憶を見せたんだから。