「六年前、俺は弟の陽太を呼び出した。でも、ずっと一緒にいたいからって傲慢な理由で、あいつの分の料理を食べたんだ」

「えっ、でも……それじゃあ水月くんは……」

「うん、この喫茶店から出られなくなった。しかも、俺は那岐と同い年なのに、身体が二十歳のままで止まってる。これが、どういうことかわかる?」


 軽く首を傾げた水月くんは、どこか感情を押し込めたような笑みを浮かべて聞いてきた。

 私がふるふると首を横に振ると、水月くんは表情を少しも変えることなく言い放つ。

「つまり、死に等しい状況にいるってこと。まあ、幽霊みたいなものだね。その点では、陽太と一緒だな」

「……バカ兄さんが俺の料理を食べたせいで、俺は必然的に完食できなくなった。というわけで、この喫茶に閉じ込められてる」


 ボソボソと陽太くんが毒を吐くと、兄である水月くんは「その節は大変申し訳ございませんでした」と土下座を始める。かなり重い話をしていると思うのだが、まったくもって緊張感のない人たちだ。


「烏場兄弟の話は置いとくとして、灯」


 自己紹介していないのに、オオちゃんに名前を呼ばれた私は目を瞬かせる。