「時枝は……俺と同じハウスクリーニングの会社で働いていて、仕事のできるヤツでした。本部で管理業務に移ってからも、現場経験者ってこともあって意見も適格だし、社長からの期待も厚かった。ただ、それをよく思わなかったのが部長です」
本木さんの記憶に触れたとき、時枝さんは部長に対する不満をぶちまけていた。
作業前にお客様に汚れの度合いや掃除するものの素材によっては、傷がつくリスクがあると確認や説明をする。そんな当然の意見を部長は卑屈にとって、スタッフの腕を信じてないのかと時枝さんを悪者に仕立てあげようとしていた。
「なにかと難癖つけられて、それでも最初は時枝も戦っていたんですが……。部長が根回して、あいつは社内で孤立していきました。限界だったんだと思います。時枝は俺に『私は間違ってますか?』とまた聞いてきたんです。そのとき、俺は『そうだな』って肯定してしまった」
時枝さんはきっと本木さんが居酒屋でかけた『時枝は正しい』の言葉をまた聞きたかったのではないか。それがあれば、味方がひとりでもいれば、頑張れたはずだ。
でも、本木さんは限界だった彼女を突き放した。それは時枝さんにとって崖から落ちるに匹敵する絶望だったのではないか。
本木さんの記憶に触れたとき、時枝さんは部長に対する不満をぶちまけていた。
作業前にお客様に汚れの度合いや掃除するものの素材によっては、傷がつくリスクがあると確認や説明をする。そんな当然の意見を部長は卑屈にとって、スタッフの腕を信じてないのかと時枝さんを悪者に仕立てあげようとしていた。
「なにかと難癖つけられて、それでも最初は時枝も戦っていたんですが……。部長が根回して、あいつは社内で孤立していきました。限界だったんだと思います。時枝は俺に『私は間違ってますか?』とまた聞いてきたんです。そのとき、俺は『そうだな』って肯定してしまった」
時枝さんはきっと本木さんが居酒屋でかけた『時枝は正しい』の言葉をまた聞きたかったのではないか。それがあれば、味方がひとりでもいれば、頑張れたはずだ。
でも、本木さんは限界だった彼女を突き放した。それは時枝さんにとって崖から落ちるに匹敵する絶望だったのではないか。