東出雲町の黄泉喫茶へようこそ

「本木さんは時枝さんに会いたいんですね」


 本木さんと思い出の料理を食べた相手――時枝さんは恐らく亡くなっているのだろう。それを肯定するように、本木さんの肩はびくりと跳ねる。

 それに少し、違和感を覚えた。ここは目を伏せて悲しむところではないだろうか。彼の反応ではまるで、時枝さんに会いたくないみたいだ。

 考えすぎ?と首を捻りながら、私は手を洗って卵を四つと辛子明太子を二分の一腹分、焼冷蔵庫から取り出した。

 それから焼きのり一枚にだし、砂糖や酒を準備する。


「お前、なんで変な顔してんだよ」

 那岐さんはボールの中で卵を溶きほぐし、そこへだしを小さじ二分の一、水を四分の一カップ、砂糖を大さじ一杯、酒を小さじ二杯入れて混ぜ合わせながら言った。