『焼き鳥が骨付き肉に見えてきたぞ、俺は……』

『だいたい、余計なことするなってなによ。あたしはハウスクリーニングの会社で実際に清掃員として働いて、本部の運営側に回ったの。それに対して部長は、ハウスクリーニングの知識はゼロ』


 本木さんの発言は完全にスルーして、弾丸のように文句を吐いた時枝さんは一旦ビールを飲んでさらに続ける。


『最近クレームが多いから、作業前にお客様とあらかじめシンクとか、お風呂の鏡とか、傷がないかチェックするよう指摘したら、時枝さんはスタッフの腕を疑ってるんですか? ですって。違うわよ、スタッフを守るためにお客様への事前の説明が大事なのに』


 相当鬱憤が溜まっていたのか、時枝さんのお酒を飲むピッチは早かった。
 さすがに心配になったのか、本木さんは時枝さんの手からビールジョッキを奪い取る。


『明日も仕事だろ。歳をとると簡単に酒が抜けなくなるんだから、ほどほどにしろよ』

『でも先輩、私、間違ってないですよね?』

『ああ、時枝は正しい。けど、出る杭は打たれる。俺たち下っ端が意見するのが気に食わないんだ』

 宥めるような本木さんの言い方に時枝さんは眉尻を吊り上げて、『本木先輩はそれでいいんですか!?』と怒る。