「居酒屋めんたい卵焼き……」
誰と食べに行く料理だろう。会社の同僚?
想像を巡らせつつ、那岐さんのところへ行くとふたりでメニュー表に指を乗せる。その瞬間、ビールジョッキがぶつかる音や上機嫌な声が大合唱のように耳に届き、景色が洋風の喫茶店から座敷のある和風な居酒屋へと変わった。
『はいよ、生ふたつ!』
店主の快活な声に導かれるようにカウンター席に視線を向ければ、あの男性の姿があったのだが、喫茶店に来たときよりもふた回りほど若く見える。
『時枝(ときえだ)、お前はもう少しうまくやらないと部長に目をつけられるぞ』
『本木(もとき)先輩、目ならもうつけられてますよ』
男性――本木さんに答えたのは、隣に座っている眼鏡をかけた三十代くらいの女性だ。
長い黒髪を団子にしてまとめ、しわひとつないスーツをきっちり着こなしている。まさにキャリアウーマン、という言葉がしっくりくる人だった。
女性――時枝さんはやけくそに焼き鳥に噛みついて、串を勢いよく引き抜く。それを見ながら、本木さんは笑顔を引き攣らせた。
誰と食べに行く料理だろう。会社の同僚?
想像を巡らせつつ、那岐さんのところへ行くとふたりでメニュー表に指を乗せる。その瞬間、ビールジョッキがぶつかる音や上機嫌な声が大合唱のように耳に届き、景色が洋風の喫茶店から座敷のある和風な居酒屋へと変わった。
『はいよ、生ふたつ!』
店主の快活な声に導かれるようにカウンター席に視線を向ければ、あの男性の姿があったのだが、喫茶店に来たときよりもふた回りほど若く見える。
『時枝(ときえだ)、お前はもう少しうまくやらないと部長に目をつけられるぞ』
『本木(もとき)先輩、目ならもうつけられてますよ』
男性――本木さんに答えたのは、隣に座っている眼鏡をかけた三十代くらいの女性だ。
長い黒髪を団子にしてまとめ、しわひとつないスーツをきっちり着こなしている。まさにキャリアウーマン、という言葉がしっくりくる人だった。
女性――時枝さんはやけくそに焼き鳥に噛みついて、串を勢いよく引き抜く。それを見ながら、本木さんは笑顔を引き攣らせた。