「うん、大丈夫。ちょっと驚いたけど」


 ははは、と苦笑いしている水月くんの身体がグラリと揺れる。振り返ると陽太くんが水月くんの腕を引っ張っていた。


「汚い、早く洗うよ」

「陽太、俺に触るとホットミルクがつくよ。結構な勢いで飛び散ったからね」

「つべこべ言わず、シャワー浴びて」


 陽太くんに連れ去られていく水月くんの手から、私はメニューを取る。


「説明は私がしとくから、着替えて来て?」

「うん、お願いします~」


 陽太くんに引きずられるようにしてバックヤードに消えた水月くんの代わりに、私はメニューの説明を始めた。


「あなたがここへ来たのは、会いたいけど会えない人に会うためですね?」

「……っ、はい……」

「このメニューを持って、その人との思い出の料理を思い浮かべてください。そうすれば、あなたの会いたい人に会えますから」


 男性は「わかりました」と言ってメニューを受け取ったのだが、その手が小刻みに震えている。先ほどから落ち着きがないし、なんだか様子がおかしい。

 私は首を傾げながら、光るメニューを眺める。やがて光がおさまり、男性からメニューを受け取ると中を確認する。