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本日の仕事を終えて喫茶店を出た私と那岐さんは真っ暗な森の中、家を目指して歩いていた。

見上げれば海の断面のような夜空が広がっていて、都会とはやっぱり星の見え方が違う。

人は死ぬと星になるとも言うが、あの鮮明に輝く光の中に美紀さんもいるのだろうか。

いつか見たテレビの番組で、星には夫婦星というのがあると耳にした。

なんでも旦那であるアークトゥルスが妻であるスピカに向かって急速に近づいており、6万年先にそばに並ぶといわれているらしい。

できるだけたくさん、磯部さんが美紀さんの存在を感じられるきっかけがあるといい。

そしていつか、何度目かの来世で巡り合えますように。

そう願っていると、ふいに『やっぱり、今も昔も夫婦じゃな』というオオちゃんの言葉を思い出す。

私と那岐さんの息がぴったりで夫婦みたいだと言われるのはわかるけれど、〝今も昔も〟という単語に引っかかっていた。

「オオちゃん、なんで私と那岐さんに今も昔も夫婦だなんて言ったんだろう」

つい心の声をもらしてしまった私に、隣を歩いていた那岐さんが足を止める。

不思議に思って振り返ると、那岐さんは澄んだ瞳でまっすぐにこちらを見据えていた。