「手、どけろ」

頃合いを見て那岐さんが薄力粉とベーキングパウダーを私のボールに投入してきたので、ムラのないように再び混ぜる。

そんな私たちの様子を眺めていた水月くんとオオちゃんは「「夫婦の息」」だね、と声をそろえた。

「夫婦じゃねぇ」

ふたりを凄みながら那岐さんは氷水が入った大きなボールの中に小さなボールを浮かせ、そこへ卵白四つと塩をふたつまみ入れた。

冷やしながら泡立てるとメレンゲのキメが細かくなって、安定するからだ。

「でも、息ぴったりだし」

にこにこしている水月くんの含みのある笑みを完全スルーした那岐さんは、これ以上戯言を吐くな、と言うようにハンドミキサーのスイッチを入れてメレンゲを作り始めた。

白っぽくなるまで泡立ってきたのを見計らって、今度は私が那岐さんのボールに砂糖を大さじ四杯を二回に分けて入れた。

その間は特に声掛けもなく、私が入れたそうにしていると那岐さんがハンドミキサーのスイッチを切って手を止めてくれたのだ。