静香に最初に告白をしたのは、翔くんだった。

白石(しらいし)翔。
3年A組の学級委員長で、誰からも好かれるような男の子。

元々そんな彼に憧れていた静香は、その告白を喜んでOKした。
けれど、どこで歯車が崩れたのか。

私が好きだと思っていた男の子、花井(はない)拓真くんに、彼女は特別な感情を抱き始めていた。
いや、彼女はただ、私がほしいと思ったものを欲しがる子なだけだったんだ。

小さい頃からそうだった。
欲しいと思った物も。
好きになった人も。
彼女は言葉には出さないが、まるで私から奪い取るように、物も、好きになった人も手に入れる。

だから私は彼女には好きな人を言わなくなった。
けれど、翔くんと付き合い始めた静香に、私は大丈夫だろうと思って、拓真くんの事が好きだと打ち明けたんだ。
それがいけなかったのか…。
彼女はあんな行動を犯した。


目の前の場面は、勝手に帰ってしまった私と翔くんに対して激怒する静香と拓真くん。

『ほんとに!何度も電話して、すっごい探したんだよ?!なのに2人で帰ったとか、どうゆう事なの?!』

『そうだよ!そこで待ってろって言ったのに。2人で何してたんだよ?』

そんな2人に、“私”も翔くんも黙ったままだったけれど、怒りが頂点に達したのか、ゆっくりと翔くんが口を開いた。

『何度も電話した?なにしてた?よく言うな。
逆に聞くけどさ、俺たちが何度も電話掛けてた時、お前らは何してたわけ?
フードコートの近くの死角のとこでさぁ!』

急に声を荒げた翔くんに、2人は肩を震わせた。

『ふざけんな。こっちは見てんだよ。しかも静香からとは結構大胆なんだな。正直幻滅だわ。』

『ち、違っ』

『静香もういいよ。もう…限界だから…。』

“私”の言葉に、静香は深く息をのんで崩れるように座り込んだ。

『もう俺たち終わりだから。それと、拓真。俺はお前と東條のことスゲー応援してたけど、もう無理だな。
東條もお前には幻滅してるから。諦めろよ。』

『…っ…。』

この時に、拓真くんは私のことを好きだったんだと気付いたんだ。
けれど結局は……

「全部とられてしまう…。」

あの日の出来事で全てが壊れて、私は静香を避けるようになった。
そんな私を見て、静香も反省する。

そう思ってたんだ。