『…妊娠…したの…?』
拓真くんの問い掛けに、私はコクンと頷いた。
『嘘…でしょ…?あの日の夜ってこと…?』
もう一度頷いた。
『……っ……。』
目の前の彼を見れずに、私は相変わらず下を向いていた。
『ごめん…。』
『……っ…』
拓真くんの謝罪の言葉に顔を上げて彼を見つめるが、彼もまた下を向いていた。
『ほんとに…ごめん…!』
そう言って私の横を通りすぎて、拓真くんは走って行ってしまった。
呆然と、私は立ち尽くす。
『……。』
あれ…?なんで…?行っちゃったの…?
振り返って、拓真くんが走って行った方を見つめる。
『たくま…くん…?』
私は彼に、何を期待していた?
私の味方になってくれるって?
結局、裏切られるのに?
馬鹿みたいに流されて、あの時の言葉を信じて、私は何をしてしまったんだろうか?
生きてほしい?守る?
そんな言葉、全部嘘だったのに?
『あれ…。どうしたら…いいんだろう…?』
真っ白になっていく頭の中に、1つ2つと疑問が生まれていく。
どうして…こうなったの…?
誰がいけなかった?なにがいけなかった?
あの日拓真くんと体を繋げなければ良かった?
あの日駅で静香と翔くんを見掛けなければ良かった?
拓真くんが近付いてきたことを翔くんに言えば良かった?
千春に全部打ち明けて、相談すれば良かった?
高校の進路を、きちんと自分で決めれば良かった?
いじめられたとき、ちゃんと本当のことを話せば良かった?
それとも…
そもそも、あの日のダブルデートの日を断れば、すべてが壊れずに済んだ…?
拓真くんとも、静香とも、翔くんとも、千春とだって…すべてが壊れずに済んだのかもしれないのに…。
何かが変わったかもしれない…。
『変わった…?ほんとに…?』
そもそも私が生まれなきゃ、こんな辛い思いしなかったんじゃないの…?
そうか…そうか…。
全部消してしまおう。
そうすれば、もう傷付かなくて済むんだ。
スッと立ち上がって、私は駆け出した。