記憶の欠片



「…最後は……」

スッと目を開けると、そこは教室ではなく、そもそも学校の中ではなかった。

「駅…か…。」

どこか懐かしいそこは、高校に入ってからは毎日のように利用していた駅のホーム。

「“私”はどこに…。」

キョロキョロと辺りを見渡しても、自分の姿をとらえることは出来なかった。

「人多いな…。」

恐らくは帰りの電車を待つ人達なのだろう。
どこか皆疲れた顔をしていた。

「あ!」

その中で私は1人たたずむ“私”を見つけた。

「やっと見つけ…」
『………。』

どこか様子のおかしい自分の姿に、私は言葉を止めた。

“私”は一点を見つめて立ち尽くしている。
その瞳は、どうしてか涙の膜がはっている。

何かがあるの?

パッと“私”が見ている方向へと視線を移そうとした時だった。

「っ!」

まるで、金縛りにあったかのように体が動かなくなった。

なに…?
そしてドクンドクンと胸が大きく脈打って、暑くもないのに汗が出てくる。

なにが…?いや…見てはいけないんだ。
これを見たら、私は……

“あなたは1人じゃない。”

「!」
ふと蘇る翼の言葉に、金縛りがとけたかのように体が動き出す。

「恐れちゃ…いけない…。」

生きてほしいと言ってくれる人がいるんだから。

1つ深呼吸をして、今だ呆然としている“私”が見つめる先に視線を移した。