記憶の欠片



カチ、カチと、扉の前に置かれた時計の針が動き始める。

現在12時。

24時間と言うことは、2回目の12時が来たら、終了と言うことだろうけど……。

「今はお昼なの…?夜なの…?」

そんな疑問を問い掛けられぬまま、翼はスッと消えてしまった。

まるで幽霊のように。

「…本当にここは現実なのかな…。」

でもまぁ…
夢が覚めるまではやるしかないのかな…。

「殺されそうだし…。」

1つため息をついて、オモチャだらけの部屋の中を見渡す。

どこに本があるんだ…?

一通り見て、この部屋には本棚がないことがわかった。

「他の部屋にあるとか…?」

そう思って扉のところまで行って、私は絶句した。

「これ……」
「ここからは出られませんよ?」
「っ!」

真後ろから声が聞こえて振り返れば、そこには先程消えたはずの翼がいた。

「出ようとしました?」
「いや…。まぁ出ようとしたけど…本を探すためで…」
「本はこの部屋の中にあります。まぁ出ようとしたところで、この部屋に扉などないんですけどね。」
「………。」

目の前の扉の絵を見つめて、私はそっと口を閉じた。

「では、頑張って下さい。」
「ちょっ!」

それだけ言って、翼はまたスッと消えてしまった。

「……監視されてるのか…。」
まぁいいや…。
とりあえず、この部屋から本を探さなきゃ進まないんだよね…。

そう思って、まずは机のとこにある引き出しを開ける。

「あ…あった…。」

そこには水色の本が1冊。
ちょこんと置かれていた。

「私の過去って…どんな…」

そっとその本に触れた。
その時だった。

「?!!!」

パアッと本に光が宿し始める。

「なにこれ?!」

恐る恐るゆっくりと本を開けば、今度は先程よりも強い光を放った。

「わっ!」

そして私はその光に包まれると、そっと意識を手放したのだった。