「あれ…?」

さっきまでの教室の光景はどこにいったのか。
気が付けばもう場面が変わっていた。

これは…校舎裏?

「“私”は…どこに…」

パッと振り返ると、“私”は真後ろに立っていた。
あれ…?長袖…着てる?

周りを見渡して、紅葉が目に入り今が秋なのだとわかった。
また視線を戻すと、“私”は不安げに瞳を揺らしていた。

あれ…?
なぜか、ドクンドクンと胸が嫌な音をたて始める。
嫌な予感がする…。
この日は確か…確か…

ガサッ。

「っ!」

音のした方へ視線を向ければ、カチッと忘れかけていた記憶のピースがはまった。

「…拓真くん…。」

そこには、あの頃よりも少し大人びた拓真くんが立っていた。

『…ごめん。呼び出して…。』
『……。』

スッと、“私”は拓真くんの横を通りすぎようとした。

『待って!』

ピタッと“私”が動きを止めた。

『騙すようなことしてごめん。手紙に名前書かなかったのは…来てくれないと思ったから…。』

手紙…。
そこで、下駄箱に名前の書いていない手紙が入っていたことを思い出した。

『俺!あの頃からずっと、東條のことが好きなんだ!たくさん傷付けたこと分かってる…。翔にも東條に近付くなって言われた。けど、俺は…』

『もう…やめようよ…。』

その声はどこか、悲しいものを感じさせられた

『…っ…』
『私は、もう大丈夫だから。罪を償ってもらいたいと思ってる訳でもない…。だからもう、関わらなっ』

“私”の言葉を遮るように、拓真くんは“私”の腕を掴んだ。

『じゃあ過去とか関係なく、俺のこと見てくれない?』
『…っ…』

グッと腕をそのまま引かれ、“私”は拓真くんに抱き締められる形になる。
その腕を、“私”は振り払うことが出来ずに固まっている。

『東條が好きなんだ…。考えておいて。』

そう言って拓真くんはスッと“私”から距離を取ると、そのまま立ち去ってしまった。


ドクンドクンと胸の鼓動が速まるのを感じた。
そうだ…ここで私は告白されたんだ…。

『どうして…今さら…』

呟いた言葉は、まるで何かをたえているようで…。

『なんで……なんで…』

涙を溢す“私”の声は、震えていた。
“あの出来事が起こる前に告白してくれていたら、もしかしたら何かが変わったかもしれない。”
この時、私はそう思っていたんだった…。