「…っ…」

ハッと気が付けば、目の前に広がるオモチャに戻ってきたのだと思い知らされる。

後ろに気配を感じて振り返れば、困ったように笑う翼がいた。

「まさかの人物ですね。」

「……そうだね…。でも、そうだった気がする。あんまり覚えてないけど…。」

私はまた本へと視線を外してそう呟く。

「救われるのかどうかは、微妙な感じになってきたね。」

「そうですね。と言うか忘れていませんか?あなたは、あなたが殺した相手を見つけるんですよ?」

殺した相手…。
そうだった…。

「本来の目的忘れてたな…。」

「まぁ、最後には思い出すと思いますよ?あなたが本当に失った記憶を思い出したいと思うならば。」

「………。」

「今現在、あなたには今見てきた記憶の他に、別の記憶がありますか?
ここに来る前のあなたは確かに高校2年生だったけれど、高校生活の記憶はありますか?」

高校生活の記憶…?
そんなのあるに……

「あれ?」

思い…出せない。
さっきまであったように思うのに、まるで霧がかかったようにそれが見えない。

私はどこの高校に行った…?
中学はちゃんと卒業した?
静香とはどうなった?
拓真くんは?

あれ…?

「それが、あなたが過去の記憶を拒んだ証拠です。」

「………。」

「その記憶を思い出したいと思うなら、あなたは必ずこの世界から出られる。
そしてやり直せる。」

やり直せる…。

「さぁ、次の本を開きましょう。」

言われるままに、私はまたオモチャの山に手を伸ばした。

パアッと光輝くのを見つけて、本に触れたのだと分かる。
その光の方へもう一度手を伸ばせば、そっと本に触れられた。

「茶色の…本…。」

その少し暗めの茶色の本を開けば、また強い光に身を包まれていった。