「おはようございます」
私は今日、有休を取って月子先生の診察に来ていた。
「珍しいわね」
私服姿の私に、月子先生も不思議そうな顔。

「で、体調は?」
「うーん。変わりません」
「そう。血液検査の結果は・・・」
カチカチとマウスをクリックしながら、カルテを確認する。

「そうね。良くも悪くもないわね。先週と変わらず」
「そうですか」
「問題はもう一つの方よね」
いつもはしない尿検査の結果を、

カチカチ。
月子先生が確認する。

「はあー」
大きな息を吐くと、先生は黙り込んだ。

「月子先生?」
長い沈黙にたまりかねて、私が声をかける。

「妊娠反応があるわね。内診するから、隣の部屋に行って」
「ええ?今からですか?」
思わず言った言葉に、
「嫌なら、婦人科に行って診てもらう?」
冷たく言われた。

月子先生は今、怒っている。
小さい頃からずっと私を診てきてくれた月子先生。
受験勉強で無理したり、ダイエットで薬をサボったときも本気で叱ってくれた。
本当のお姉さんみたいに思ってきた。
その月子先生を、怒らせてしまった。