「はい。娘が1人。今日で9歳になります」
「きゅ、9歳?」
又々、声を上げてしまった。

「先生。驚きすぎです」
にこやかに笑いながら、突っ込みを入れられた。

あれ?桃子さんってこんなに笑う人だっけ?
私のイメージではいつも1人でいて、キャアキャア言ってる女子達を冷めて見ているイメージなんだけど。

それに、
「桃子さんって、いくつですか?」

ゴホッ。
突然年を聞かれて、コーヒーを飲んでいた桃子さんがむせた。

「ごめんなさい。驚かせましたね」
「いえ、大丈夫です。私は、26歳です」

へえ、同い年かぁ。
随分大人っぽく見えるけれど。

ちょっ、ちょっと待って。
26歳で、子供が9歳って、

「随分お若いときのお子さん?」
聞いてはいけないことだったかも知れないけれど、深く考えることなく聞いてしまった。
「17歳の時に生みました。当時付き合っていた彼と結婚するつもりで生んだんですが、出産後に別れてしまいました。若気の至りです」
「・・・」
なんとも言葉が返せない。

「出産の為に高校もやめてしまったので、大検を受けて大学の看護学科に行きました。お陰でみんなより2年も長くかかりましたけれど」
「へー、凄いですね。私、同い年なのに。なんだか恥ずかしい」

私は17歳の頃何をしていたんだろう?
毎日塾に通って、とりあえずどこでもいいから医学部にって思っていた。
出産とか、育児とか考えられない。

「私は樹里先生や高橋先生の方が凄いと思いますし、羨ましいとも思いますよ」
「ええ?そうですか?」
羨ましいは分かるけれど、凄いはないでしょう。
それに、何で渚?