「では、よろしくお願いします」
「ありがとうございました。気をつけて帰ってください」

患者の引継ぎを終えた私たちは、転院先のスタッフに挨拶をして病院を後にした。
今回の搬送もとても順調だった。
フライトナースの桃子さんはすごく優秀で、私が言葉にする前から準備をしてくれる。
仕事に対する厳しさと、女子特有の慣れあう感じの無さから、孤立することも多いけれど、間違いなく仕事はできる。
本当に、フライトナースの鏡だ。


タクシーで最寄り駅に向かい、私たちはホームに駆け込んだ。
さあ、特急で3時間。
長い旅が始まる。

駅のコンビニで夕食を買い込んで、私と桃子さんは列車に乗り込んだ。

「病院に着くのは9時前になりそうですね」
桃子さんが時計を気にしている。
そう言えば、引き継ぎに少し時間がかかってしまったから、予定よりも少し遅れ気味。

「もしかして、この後に予定がありますか?」
桃子さんはあまり自分の事を話さないから、聞いたらまずいのかななんて思ったりもしたけれど、つい聞いてしまった。
しかし、とても意外な返事が返ってきた。

「今日は子供の誕生日なんです」
ちょっと照れながら、話してくれた。
「ええっ。お子さんがいるんですか?」
思わず声が大きくなった。