その後、デパートを覗いたり公園を歩いたりとブラブラして過ごした。
山口さんとの時間は、気負いがなく、自然体でいられた。

「樹里亜さんは結婚を考えるような男性は居ないんですか?」
公園のベンチに座りながら、お見合いの席には似合わないことを聞いてきた。
「ええ?」
「彼氏とか、いないんですか?」
さらに聞いてくる。

「あの、今日ってお見合いなんですよね?」
つい、聞き返してしまった。
「まあ。そうですね。でも、お見合い結婚なんてする気がありますか?」
「いえ。それは・・・」
私は言葉に詰まった。

一体山口さんは何を考えているんだろう。
どんなつもりで、今日ここに来たんだろう。
さっぱり分からない。

「僕は知り合いに勧められてここに来ました。いい加減な気持ちではありませんが、まだ具体的に結婚を考えてはいません」
「そうですか」
「樹里亜さんは?」
「私も、叔母に勧められてきました。今、結婚を考えられるような男性は居ませんが、好きな人はいます。ですから、お見合いは最初からお断りするつもりで来ました。ごめんなさい」
私は立ち上がり、山口さんに向けて深々と頭を下げた。

「いいんですよ。なんとなくわかっていましたから」
「本当にごめんなさい」
ひたすら頭を下げることしかできない。