その後、私たちは簡単な自己紹介をした。
山口海人さんは28歳の高校教師。理科を教えているらしい。
いかにも優しそうで、穏やかそうな人。
2人兄弟の次男で、今も実家暮らし。
「樹里亜さんは一人暮らしですか?」
「はい。職場から駅二つ離れたマンションに暮らしています」
「へー、さすが」
大体この後、「お医者さんはお金持ちなんですね」と言葉が続く。
どこの飲み会に行っても、必ず言われる。
「理解のあるご両親ですね」
「はあ?」
思わず聞き返してしまった。
「こんなに近くに住んでいて、それでも1人暮らしを許すなんて理解がある親御さんです」
なるほど、そういう見方もあるのね。
今までそんな風に考えたことなかった。
「山口さんなら嫌ですか?」
なぜだろう、彼の見解が世間の声のような気がして意見が聞きたくなった。
「そうですねえ。僕はまだ娘を持ったことはありませんが、兄貴の娘を見ていると本当にかわいくて、ずっと手元に置いておきたいと思うはずです」
「そんなもんですか・・・」
「そんなもんですよ。とはいえ、兄貴の娘は2歳ですけどね」
ハハハ。
と、笑う。
「2歳って、まだ赤ちゃんじゃないですか」
私もつられて笑った。
「まじめな話をすると、僕も職業柄いろいろな親御さんを見ています。共通しているのは、親はみな子供がかわいいんです。手放したくない、一緒にいたいと思うのも親の愛情ですし、かわいい娘のわがままを聞いて1人暮らしを許すのも愛情です」
さすが先生。
言葉に重みがある。
「すみません。説教みたいでしたね」
山口さんが頭を下げた。
「いいえ、おっしゃることはよくわかりました。私は今まで、1人で大きくなったような気がしていましたから」
きっと、山口さんは私の生い立ちを知っている。
それを知った上で、育ててもらったことにまずは感謝をすべきだと言っているんだと思う。
いかにも教育者らしい表現だけど、押しつけがましくなくて、気持ちはまっすぐに伝わってきた。
山口海人さんは28歳の高校教師。理科を教えているらしい。
いかにも優しそうで、穏やかそうな人。
2人兄弟の次男で、今も実家暮らし。
「樹里亜さんは一人暮らしですか?」
「はい。職場から駅二つ離れたマンションに暮らしています」
「へー、さすが」
大体この後、「お医者さんはお金持ちなんですね」と言葉が続く。
どこの飲み会に行っても、必ず言われる。
「理解のあるご両親ですね」
「はあ?」
思わず聞き返してしまった。
「こんなに近くに住んでいて、それでも1人暮らしを許すなんて理解がある親御さんです」
なるほど、そういう見方もあるのね。
今までそんな風に考えたことなかった。
「山口さんなら嫌ですか?」
なぜだろう、彼の見解が世間の声のような気がして意見が聞きたくなった。
「そうですねえ。僕はまだ娘を持ったことはありませんが、兄貴の娘を見ていると本当にかわいくて、ずっと手元に置いておきたいと思うはずです」
「そんなもんですか・・・」
「そんなもんですよ。とはいえ、兄貴の娘は2歳ですけどね」
ハハハ。
と、笑う。
「2歳って、まだ赤ちゃんじゃないですか」
私もつられて笑った。
「まじめな話をすると、僕も職業柄いろいろな親御さんを見ています。共通しているのは、親はみな子供がかわいいんです。手放したくない、一緒にいたいと思うのも親の愛情ですし、かわいい娘のわがままを聞いて1人暮らしを許すのも愛情です」
さすが先生。
言葉に重みがある。
「すみません。説教みたいでしたね」
山口さんが頭を下げた。
「いいえ、おっしゃることはよくわかりました。私は今まで、1人で大きくなったような気がしていましたから」
きっと、山口さんは私の生い立ちを知っている。
それを知った上で、育ててもらったことにまずは感謝をすべきだと言っているんだと思う。
いかにも教育者らしい表現だけど、押しつけがましくなくて、気持ちはまっすぐに伝わってきた。