プルル プルル
珍しく、朝から携帯が鳴った。

ん?
急変かな?
こんな時間にかかってくるのは、受け持ち患者の急変のことが多い。

「もしもし、竹浦です」
『樹里亜?大樹だけど』
「どうしたの?」
『お前、本当にお見合いする気なの?』
「何、どうして?」
朝6時半に電話する話かあ?

『本当に付き合ってる人はいないの?』
「・・・」
思わず黙り込んだ。

もしかして、大地は気が付いてる?

その時、
プププ プププ
渚の携帯が鳴った。

マズイ。
私は寝室に駆け込んだ。

遠くのほうで、渚が電話に出ている。
どうやら病院からみたい。

「忙しそうだから切るわ。今日は救急外来担当だろう?」
「うん」
「俺も、脳外の救急待機だから。会えるだろう。その時な」
「はあ・・・」
まだ、この話まだ続きますか。

今は穏やかに話している大樹だけど、いざ渚のことがバレたら、大変だと思う。
昔から、私に近づいてくる男子はことごとく大樹に牽制された。
高校時代、それでもしつこく寄ってきた先輩は街で不良に絡まれてボコボコにされたらしい。
そんな逸話がゴロゴロしている。

「俺、先に行くから」
渚が顔を覗かせた。

ええ?
今日は日曜日。
渚はお休みのはず。

「急変なの?」
「ああ。304の岡さんが急変したらしい。樹里亜、みそ汁が残ったら冷蔵庫に入れといて」
「うん。行ってらっしゃい。私ももうすぐ出るから」

手早く朝食の片付けをして、身支度を済ませると、私も渚の後を追った。