「竹浦落ち着け」

そう言うと、先生は私の方を向いて小さく息を吐いた。

そして、


「実は俺にも4つ上の兄貴と2つ上の姉貴がいたんだ」


いたんだ?

違和感を覚えながら、先生の話に耳を傾ける。


「年の近さもあって小さい頃は喧嘩ばかりだったけれど、本心では嫌いじゃなかった。
兄貴は大学を出て公務員になった。
姉貴も看護師を目指して大学に行っていた。
小さい頃から看護師を夢見ていた姉貴は、一生懸命勉強していた。
でも・・・大学2年、二十歳の時に事故で亡くなった。
朝いつも通り出て行って、そのまま帰ってこなかった。
楽しみにしていた白衣にも、一度も袖を通すことがなかった。
俺は、姉貴の冷たくなった亡骸を前に、本気になって生きてみようと決めたんだ」


先生がちょっと涙声になっている。



「なあ竹浦、意地を張るな。頑張ってみろ。俺も応援するから」


私は返事をしなかった。


ただ涙が流れた。


その後、家まで見届けると言った先生に見送られ、私は自宅に帰った。