渚を見送った数日後、私は大樹に連絡を取った。

「今どこにいるんだ」
地の底から響くような声。
「美樹おばさん家」

はあぁー。
深い深い溜息が聞こえた。

「お前、覚悟はできているんだろうな」
「うん」
これだけのことをした以上、ただで済むとは思ていない。
もう、竹浦の家には戻れないかもと思っている。

長い長い沈黙の後、
「いいか、そこから1ミリも動くな」
そう言って電話が切れた。

電話をかけたのは夕方。
電車や飛行機の時間を考えると、明日の日中には大樹は来てしまう。
それまでに、私はもう一度乳児院へと向かった。