「で、どうする?」
真っ直ぐに渚が私を見ている。

「どうって?」
「俺は樹里亜を連れ戻すつもりで来たんだ」
「うん」
分かってる。
コソコソ隠れてるなんて、渚が大嫌いなことだもんね。

「でも、それどころではなくなりそうだ」
本当に困った顔。

ふと、渚はこのまま逃げるんじゃないかと思った。
大学卒業の時、お父さんから逃げたように、
でも、それはダメ。

「渚。みのりさんとちゃんと話をして」
「・・・」
返事は帰ってこない。

「じゃないと、私がまた逃げるよ」
「ダメだっ」
早かった。

「それは許さない」
強い口調。
「じゃあ、みのりさんと話してくれる?」
「・・・」
渚は黙り込む。

いくら血を分けた親子でも、長い時間の経ったわだかまりは簡単には消えないんだろうか?
きっと、渚なりに苦しんでいるんだなあと感じた。