人間の60%は水で構成されているらしい。犬も60%。猫は70%なんだとか。
この世の生物は大抵70%前後の水分で構成されている。私も、あの子も、あの動物たちも、ほとんどが水なのだ。水に生かされて私たちは生きている。人間も、動物も、変わらないのだ。ただほんの少し、人間に知能があっただけで。
いなくなったミイの体はモノになった。
重力に逆らえなくなって、ぐにゃりとしていた。時間がたって固まるまで、死んだ動物はぐにゃりと柔らかいのだそうだ。私は見たことが無いけれど、きっと人間もそうなのだろう。生きているのとそうでないのとでは、こんなにも違うのかと思わされる。魂が抜けるというのは、あながち間違っていないのかもしれない。それくらいにミイの体はただの物体に、物質になってしまった。
なくなったウサギ小屋のウサギは、学校側が飼い主を募って、それぞれ違う生活を始めたのだと後から聞いた。
人間にとっての正解と彼らにとっての正解が違うことは明らかだけれど、まだどこかで生きているウサギたちは今幸せなのかもしれない。
管で繋がれて延びた時間が、ミイにとってどんな時間だったのかはわからない。もしかしたら、私たちと居る時間よりも、管で繋がれながら一秒でも長く生きていたほうがよかったのかもしれない。ミイにとってどちらが幸せだったのか、私たちには正解を導き出すことが出来ない。
けれど、これだけは言える。
誰よりも、何よりも、私たち家族はミイのことが大好きだった。世界で一番、きみがかわいかった。太っていて不細工な顔をしながら寝ていることも多かったけれど、私たちにとって、私にとってかけがえのない存在だった。
ミイのかわりはどこにもいないし、ミイはミイだ。私たちの大好きな、ミイだ。
私は、ミイと過ごせて幸せだったよ。
ミイは触られるのも抱っこされるのも嫌いだったね。
でも、ひとりになるのはもっと嫌いだったね。
家に誰もいないと思ってよく鳴いていたね。
私が二階から顔を出すと、なんでもないみたいに眠りについたね。
家族が旅行にいっていないとき、普段はこない私の布団の上にのって寝ていたね。
ミイが本当はさみしがりやだってこと知ってるよ。
本当は誰かと一緒にいたいことも知っているよ。
ねえ、ミイ。ごめんね。たくさんごめんねがあるよ。
でもそれ以上に、たくさんのありがとうがあるよ。
人間が動物に与えられるのは、きっと愛なんじゃないだろうか。この歪んだ世界に、理不尽な人間に、たったひとつ与えられているのは、きっと無償の愛なんじゃないだろうか。
もっと世界を愛していきたい。
もっと人間を信じていきたい。
きみを一生忘れないように、きみを愛したことを誇りに思って、私はこの世界で生きていこうと思う。きみがいないこの世界をめいいっぱい、愛で満たしていこうと思う。
愛をこめて
世界で一番大切なきみに
この物語を贈る
【ウォーターライフ】完